「戒名と日本人」

戒名と日本人 ☆☆☆☆

坊主丸儲けを批判する本かなと思って買ってみました。大分本棚の肥やしとなっていましたが、この期に及んで読んでみました。これがなかなか面白い。日本の神道や仏教に興味のあるかたには是非おすすめします。本来の原始仏教から中国を経て日本に至った経緯はともかく、日本でアニミズムと融合するは、階級社会にも迎合するはで外来文化を徹底的に換骨奪胎する手法は、うーん日本人なのだな、と感じさせる好著である。
戒名の謎、というタイトルになっていはいるが、全般的に我が国における神仏の融合についての著者としての意見が、かなり説得力を持ちながら迫ってくる論文である。新書として気軽に手に取れるところが、「日本」という国の底力を物語っているような気がする。久しぶりに読んだ四つ星ですね。かなり面白いし、故遠藤弁護士の「日本の寺に仏教はない」という糾弾本と比較すると、全く主張は違うところが、ぷっ、となる場面もある。キリストを始めイスラム、正統派の原始仏教では、人間は不完全な存在、そもそも原罪を背負った罪深い存在という認識であるがそれを、根底から否定する日本人、いや否定などしていない、そうかもしれないな〜と思いつつ、絶対に「自分のことではない」と心の底では思っている(否定していないのだが、強い肯定はあり得ない)自分がいるのも事実である。
さらに、明治初期の廃仏毀釈で失われた死者をどう扱うのかという考えと、太平洋戦争での戦死者をまつる靖国をどう考えるのかについても、貴重な示唆をいただいたような気がする。日本の「穢れ」に対する歴史的な解決策をもっと大切にしなければ、という読後感である。